【潜入!】リンゴ赤果肉品種検討会【2018年版】

長野県果樹研究会リンゴ部会が主催する「リンゴ赤果肉系品種検討会」に行ってきました。

タイトルには【潜入!】なんて書いてありますが無断で入ってきたわけではありません、特に参加資格もないのではないでしょうか…。果樹研究会に入っていないと開催日程が手に入らないという面はありますが…。

「品種検討会」は栽培者向けに行われ、各地で栽培している人が栽培されたリンゴを持ち寄って

  • 「今年はこんな果実ができました。」
  • 「うちのリンゴはこんな症状が確認されました。」
  • 「来年はこんな工夫をしたいと思いますが何かアドバイスは…?」

といった報告や情報交換を行う場になっています。

僕の場合、果樹研究会に入会はしていますが、ほぼ幽霊会員のようなものです…。

 

注目品種をざっくりと紹介

こちらも合わせて御覧ください

【リンゴの中が赤い!?】赤果肉リンゴをちょっと詳しく紹介するよ

2018年8月1日

【ふじよりも味よし!?】ムーンルージュ

「ムーンルージュ」は「生で食べて美味しい!!」これに尽きると思います。

11月、12月に美味しいりんごといえば「ふじ」が超有名ですが「ムーンルージュ」を食べた人の中には「ふじよりもおいしい!」という感想を持つ人もいます。

赤果肉でなくてもこの味なら普通に品種登録されたのではないかと思うほどです。

果皮の色は黄色と赤色の間、オレンジ色に近い「本当に…?リンゴ…?」という色をしています。

赤果肉リンゴの知名度も低いですし外観から「なにこれ?」と驚きと興味を持ってもらえるならばこれも「ムーンルージュ」の魅力の一つです。

外観で中がちゃんと赤果肉になっているかが分かるのもうれしいですね。

 

僕も何回も食べていますが、自信をもっておいしい品種だといえます。

「ふじよりも美味しいか」と聞かれると、悩んだ末に「どっちもおいしい」という答えを出します。(好みの問題もありますし、実際に食べないとわからないこともたくさんあります。)

「ふじ」は本当に味が濃厚で少しの酸味と強い甘み。

「ムーンルージュ」は味の濃厚さでは「ふじ」に敵いませんが、しっかりとした甘みと酸味。「ふじ」にはない味わいが口の中に広がります。

優劣つけなきゃいけないこともありませんし、どっちも美味しいで良いじゃないですか。

 

【外観も赤!果肉も赤!】炎舞

縦に切った断面が光って見にくいですがしっかりと着色していました

「炎舞」の第一印象は「ムーンルージュ」とは違って普通のりんごに見えます。

しかし、切ってみれば中まで赤い赤果肉品種です。

果皮に色がつきやすい品種で着色のための管理をしなくても果皮は濃い赤色に着色します。

このきれいな赤色は今後スーパーに並んでも「おいしそう!」という印象を消費者に与えてくれるんじゃないかと思います。

一方で果肉の方は「着色が不安定」と言われていました。

しかし、収穫時期を見直したことにより「今年は安定して果肉に色が入っている」という報告がありました。

(収穫時期を見直したが今度は別の問題が…。という報告も一方ではありました。生産する地域での差、樹の状態での差もあるのでまだ検討しなければいけないことも多そうです。)

果肉の着色に関しては明るい報告もあったので今後も期待しています。

「炎舞」の味は甘味のあとに「ムーンルージュ」よりも少し強めの酸味を感じます。

「ムーンルージュ」のようにこれまでに味わったことのない味、というよりも単純にリンゴとして美味しい味です。

「炎舞」は香りが強いという話をよく聞きます。独特の香りというより僕は普通に「美味しそうなリンゴの香り」と認識しています。栽培して収穫すると香りについての感想も変わるかもしれません。

 

「香り…」と考えているうちにもらった「炎舞」のうち一つを食べきってしまいました。美味しかったです。

 

【果肉着色の安定感抜群!】なかののきらめき

中野市でしか栽培できない品種として登録された「なかののきらめき」

「中野市でしか栽培できないなら気にかけなくていいや」と思っていましたが、そうでもなくなるようです。

「なかののきらめき」で驚かされたのは果肉の赤色がとても鮮やかだったことです。

他の品種が「赤」というよりも「ピンク」という表現が合いそうな色合いのなか「なかののきらめき」の果肉の色はしっかりと「赤!」と言える色でした。

果肉着色の安定性もかなり良いようです。

もともとの果皮の色は黄色なので「ムーンルージュ」と同じように果肉に色が付くと果皮はオレンジ色ともいえる色合いに変化します。

地域限定品種ということで持ち寄られた数は少なかったですが「ムーンルージュ」よりも外観が整っているという印象を持ちました。

「なかののきらめき」の味は酸味が強いですが生食でも美味しいと思えます。

「紅玉」が好きなリンゴ好きは「なかののきらめき」も好きになると思います。

「王林」の血があるせいか味の中に確かに「王林」がいます。

 

「酸っぱい王林」だと母に説明したら「何だそれ…。」と言われました。

「王林」は全く酸味のない品種なので戸惑うのもわかりますが僕は「なかののきらめき」の味は「酸っぱい王林」だと思います。

 

食べやすさNo,1「なかの真紅」、使い方広がる「冬彩華」

なかの真紅

10月中に収穫する品種として登録されていますが11月まで収穫せずに置いておくと果肉の着色が安定するようです。

そうすることにより味の面では酸味が抜けて食べやすい味になっているという印象を受けました。

逆を言ってしまうと、酸味が抜けていると味に締まりがないと言ったらいいのか、他の赤果肉品種と食べ比べると「味が薄い」と感じてしまいました。

しかし、単体で食べるのであれば味が薄いとは感じません。「酸味がなくて食べやすい」こういうリンゴが好きな人もいるんじゃないでしょうか。

 

冬彩華

長く楽しめる酸味が強めの赤果肉品種を目指して開発された「冬彩華」

酸味が強いとはいえ、十分に美味しく食べることもできます。

ミツが入っていたせいもあったのか昨年とは少し違う味の印象を受けました。

サッパリとした酸味は柑橘系の果物を連想させてくれました。

「冬彩華」は酸味も強く長期保存が可能なので料理向きの品種ではないかと思います。

同じく酸味の強い赤果肉品種として「なかののきらめき」を紹介しましたが、長期保存という面では圧倒的に「冬彩華」が強いです。

 

リンゴ赤果肉系品種はどこへ向かう?

安定した生産にはまだまだ課題がありそう…。

赤果肉系品種の果肉の着色は気候に大きな影響を受けることがわかっています。

しかし、最近では異常気象と言われるような天候が毎年のように起きています。

台風の被害はもちろん、高温が続けば外観も悪くなりますし、果肉の着色も悪くなります。栽培地域によって課題も異なるかもしれません。

そんな中で本当に安定した果肉の着色を実現できるのか、消費者に満足してもらえるだけのリンゴが作れるのか、といったところはまだ未知数です。

生産が先?需要が先?

「中まで赤いリンゴ」の存在を知っている人はまだまだ少ないと思います。

「赤果肉リンゴ」というネーミングも「真っ赤」が連想されると少し敬遠されてしまうかもしれません。

 

赤果肉系の品種を栽培している人もまだまだ少ないです。

果肉の着色が安定しないという現実とそれを消費者の方にどうやって伝えていくか、「珍しい」だけで終わってしまう品種ではないのか。生産者の課題もたくさんあります。

 

消費者の方々からの「中まで赤いリンゴを食べてみたい!」という声が多く上がればそれに伴って生産量も増えていくと思います。

逆に生産者の方が「赤果肉系のリンゴも美味しいぞ!楽しいぞ!」と生産量を増やせば魅力も自ずと消費者の方々に伝わると思います。

どっちが先であってもまずは赤果肉リンゴの魅力が多くの人に伝わればそれで良いと考えています。

 

新しい赤果肉りんご?

今年、信州大学の伴野先生がスーパー赤果肉品種を発表しました。

【信州大学伴野教授開発】スーパー赤果肉リンゴはどんな品種か考える

2018年10月14日

中野市で赤果肉リンゴを育種(品種を新しくつくること)した吉家さんも新たな品種開発に取り組んでいます。

詳細はわかりませんが「赤果肉リンゴにも多くのバリエーションを」と芯の周りだけ赤い品種などを開発中のようです。

もしかしたら上で紹介した品種がメジャーになる頃に「こんな面白い品種ができたそうだよ!」とお知らせするかもしれません。しないかもしれません。育種は簡単ではありませんから…。

 

おまけ

長野県農業大学校時代の同期から「炎舞」と「ムーンルージュ」をいただきました。(炎舞多め)

キズあり、外観難あり、といったものですが「欲しい人がいたらあげて!」と言われました。

何百キロもあるわけではないので一人数個で良ければ欲しい人にあげたいと思います。
(僕も会った人に配っているので終わっていた場合はご容赦ください。)

実際に取りに来てもらうか、宅配便で送るか(送料はご負担ください)になると思いますが、興味のある方がいたらご連絡ください。

食べてみた感想を寄せていただけるとありがたいです。

問い合わせフォーム

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です